[詩学講座]【詩学基礎編】第1講 「詩学」をめぐる思想と書物
1. 学としての「詩学」と書物
「詩」とは何か、詩の原理と方法についての論考、考え方の立場、「詩学」の歴史を概観。
【紀元前】――古代ギリシア哲学、「創作=詩作」の時代
・シモーニデース『倫理論集』――詩と絵画・造形美術の比較を論述。
・プラトン『国家』他――『国家』「詩人追放論」。
美・芸術――感覚的な対象を「ミメーシス 模倣」するもの、真実在の不完全な模造。
ヒトの感覚の向こうにあるイデアが最高の美。
詩――「ミメーシス 模倣・再現」=人間の本性。詩のよろこびの根源、普遍性。
・ホラーティウス『詩論』
→「詩 Poiema」「詩作 Poiesis」「詩人 Poietes」の3項考察。
詩――「有用性」「よろこび」。
【中世】――(10~15世紀)「吟遊詩人」「宮廷詩人」の時代
多くが王侯貴族、騎士道や宮廷の恋愛をテーマとした歌曲。
【近世~近代】――美学・芸術学の誕生~展開の時代
・ボワロー『詩学』(1674)
詩――「理性」が捉えた「真」なるもの。
・バウムガルテン『詩についての哲学的省察』(1735)、『美学』(1750)
「美学 aesthetica」――詩の美学的価値の原理的考察を思考する学。
「感性的認識論 scientia cognitionis sensitivae」
詩――「完全な感性的言語 oratio sensitiva perfecta」。
【近現代】――詩の古典の総合~創造力と詩的言語の解析へ
・シェリー『詩の擁護』(1821)
詩――想像力の表現。
・外山卯三郎『詩学概論』(1929)
詩学――「〈芸術学〉に基礎づけられる〈詩学〉」を提唱、方法を体系化。
・エーミール・シュタイガー『詩学の根本概念』(1946)
詩学――抒情的(透入)、叙事的(表象)、劇的(緊張)を詩的類概念において体系化。
・安藤元雄・乾昌幸編『詩的ディスクール――比較詩学をめざして』
上記書籍・論述の論旨を概説。
2. ドイツ哲学における詩的原理論考の歴史
――ディルタイ『詩と体験』(『体験と創作』)による解説
近代ヨーロッパ文芸と哲学的論考、ドイツ・ロマン派の「詩学」「詩的原理」の成立過程
(カント、フィヒテ、シェリング、ハイデガー、シラー、ジャン・パウル、
・ディルタイが総合したドイツ「詩学」――『詩と体験』『想像力の分析』『世界観学』
3. フランス文学における詩的原理論考の歴史
――ロラン・ド・ルネヴィル『詩的体験』による解説
プラトンの詩人論の二律原理
・知性 エトス Ethos ―主知主義(ポー、ボードレール、マラルメ、ヴァレリー)
・情熱 パトス Pathos ―無心主義(ユゴー、ノヴァリス、ヴェルレーヌ、ネルヴァル、ランボー、ロートレアモン、シュルレアリスム)
その実、いずれも同一の意識状態、能力の出現を示す、極めて近い考え方、
あるいは相互補完的なものであったという見方を解説。
七里知子記